これを見れば理解できる Contact Lens for Amazon Connect 入門
はじめに
Amazon Connect(以降、Connect)の機能1つである Contact Lens for Amazon Connect(以降、Contact Lens)は、Connectでの通話内容を元に、機械学習による会話分析ができるサービスです。
機能としては、通話内容を文字起こし、文字起こし内容から感情分析、通話内容のキーワードをトリガーにアラートを通知する、などができます。
今回は、Contact Lensを理解できるよう、機能、コンタクトセンターで使用するメリット、注意点、会話分析の精度、利用費、データの保存先と暗号化などをご説明していきます!
これから記載する内容は、2023年3月1日時点での内容になります。
機能
先に用語を説明しておきます。Connectでは、以下の用語を使用します。
- 電話をかけてきたユーザー → 顧客
- 電話対応したコンタクトセンターの担当者 → エージェント
- 電話対応した1件のこと → コンタクト
日本語対応している機能は主に4つありますので、順に解説します。
- コンタクト詳細
- 感情分析
- カスタム語彙
- リアルタイムのアラート
1 コンタクト詳細
コンタクトの詳細ページでは、主な以下の内容が1ページで確認できます。
- (1) コンタクトの概要
- (2) 対話分析
- (3) 録音
- (4) 文字起こし
- (5) エージェント
コンタクト詳細の実際の画面です。
また、コンタクト詳細を確認するには、通話を記録する必要があります。
手順は以下のブログを一読下さい。
(1) コンタクトの概要
コンタクトの概要では、担当したエージェントや対応した時間、電話を切った理由、顧客の電話番号などが確認できます。
(2) 対話分析
対話分析では、コンタクト内での顧客の感情の推移、顧客感情の割合、通話時間で顧客とエージェントの通話時間の割合などが確認できます。
通話していない時間の割合が多い場合や、顧客の否定的な感情割合が多い場合、エージェントに指導するときのアクションプランに役立ちます
(3) 録音
録音では、通話内容を聞くことができます。
エージェントと顧客のどちらが話したかどうか、話した内容の感情などが可視化されており、分かりやすいですね。
(4) 文字起こし
文字起こし(トランスクリプト)では、エージェントと顧客の会話内容が感情とともに文字起こしされます。
通話を聞かずとも文字起こしした内容で、通話内容を確認できますので、便利です。
ちなみに、文字起こしは、Amazon Transcribeを利用して音声から文字起こしされています。
(5) エージェント
エージェントでは、文字通りエージェントの情報を確認できます。
具体的には、ユーザー名、対応時の時間、保留にした回数、AWC(アフターコールワーク)の時間などです。
AWCの概要や設定方法は、下記記事を参考にしてください。
2 感情分析
コンタクト詳細でもありましたが、Contact Lensでは、感情分析ができます。
感情分析は、Amazon Transcribe を利用して通話内容を文字起こしし、Amazon Comprehend を利用して自然言語処理 (NLP) を適用し、-5 (最も否定的) から +5 (最も肯定的) の間でスコアを生成します。
そのため、感情分析は、通話の声色は関係なく、文字起こしの内容のみで分析されます。
どういった言葉が否定的、肯定的と判断されるか調査したブログがありますので、一読下さい。
3 カスタム語彙
カスタム語彙では、文字起こしの精度を向上させる機能があります。
特に、専門用語や適切に文字起こしされない単語をカスタム語彙に追加することで、精度を向上させることができます。
実際にカスタム語彙を設定する手順をブログにしていますので、一読下さい。
4 リアルタイムのアラート
通話内容の特定のキーワードや感情をトリガーに、以下のことを実現するルールを作成できます。
- 別のエージェントに転送させる
- 別のエージェントがチャットで支援
- エージェントの上司に自動でメール通知させる
- EventBridgeをトリガーできるので、Lambda経由でDBに書き込む
実際にリアルタイムのアラート設定したブログがありますので、一読下さい。
プレビューと日本語未対応機能
2023年3月1日時点で、日本語未対応は、以下の2つです。
- コンタクトの要約
- 機密データのマスキング
どちらも便利な機能ですので、日本語対応が待ち遠しいです。
以下は、GAされておらず、プレビューの機能です。
- 評価フォームとコンタクト採点
- 評価フォームを利用することでエージェントの会話内容の評価や機械学習を用いたスコアリングが可能
こちらも気になりますね。
コンタクトセンターで使用する際のメリット
先程、Contact Lensの機能についてご説明しましたが、これらの機能がコンタクトセンターで利用するメリットとしては、以下が挙げられます。
- 簡単に分析設定可能
- Connectで数回クリックで設定可能です。
- エージェントの生産性の向上
- 顧客対応時の会話が文字起こしされるため、エージェントは、メモ作成などの事務作業がなくなります。
- 通話中の特定キーワードをトリガーにタスクを自動作成することができ、エージェントのサポートに役立ちます
- 管理者はリアルタイムにエージェントのサポートが可能
- エージェントと顧客が対応中、リアルタイムアラートで管理者に通知し、管理者がチャットで指示を出すことや、通話を転送することが可能
- リアルタイムで通話内容が文字起こしされ、引き継ぎがスムーズ
- エージェントの通話内容は、転送するときに次のエージェントに渡すことができます
- 高度なコンタクト検索が可能で、管理者がエージェントにフィードバック可能
- キーワードや感情分析のスコア、無言の時間など細かい条件で検索できます。会話を分析することにより、お客様に対して否定的な言葉を使っていないかなど、エージェントにフィードバックできます
上記のメリットによって、下記を実現できます。
- エージェントにフィードバックすることで、エージェントのスキルを高めることができます
- 管理者がリアルタイムでエージェントのフォローができます
これらを実現することで、コンタクトセンターの目的の一つである顧客満足度向上に繋げることができますね!
精度に関して
Contact Lensの文字起こしの機能や感情分析の精度に関しては、発展途上の部分もあります。
ただ、文字起こしに関しては、誤訳されている箇所をリストアップし、カスタム語彙を使うことで精度を上げることができます。
感情分析に関しては、先程のブログを再掲載しますが、比較的精度は高いと感じました。
利用費
東京リージョンでContact Lensを有効にすると、通話した時間が利用費となります。
- 音声通話
月間通話時間ごとの料金 1 分あたりの料金 最初の 500 万分 (階層1) 0.015 USD 500 万分以上 (階層2) 0.0125 USD - チャットメッセージ
料金 メッセージあたりの料金 メッセージあたり 0.0015 USD
データの保存先と暗号化
通話記録や文字起こしのデータは、KMSキーで暗号化し、保存されています。
保存先は、以下の通りです。
- 通話記録の保存先
- S3バケットの以下のパス
- s3://amazon-connect-xxx/connect/
CallRecordings
/2023/01/01/xxx.wav CallRecordings
のプレフィックス名は、Connectのマネジメントコンソールで変更できます。
- s3://amazon-connect-xxx/connect/
- S3バケットの以下のパス
- 文字起こしの保存先
- S3バケットの以下のパス
- s3://amazon-connect-xxx/Analysis/Voice/2023/01/01/xxx.json
- S3バケットの以下のパス
- エクスポートされたレポート
- S3バケット
- 問い合わせフローログの保存先
- CloudWatch Logs
- ロググループ名:/aws/connect/
- CloudWatch Logs
データ保護の詳細は、下記を一読下さい。
Contact Lensの機能の仕様
機能の仕様になります。カスタム語彙は20ファイル作成できます。
ただし、コンタクトセンターに適用されるカスタム語彙のファイルは1つまでですが。
項目 | 作成できる上限数 |
---|---|
カスタム語彙 | 20 |
問い合わせ後の Contact Lens ルール | 500 |
チャット後の Contact Lens ルール | 500 |
リアルタイムの Contact Lens ルール | 500 |
Contact Lensが学べるWorkshop
以下は、Contact Lensが学べるWorkshopになりますので、ぜひお試し下さい。
最後に
以上で、Contact Lensのご説明が終わります。
この記事で、Contact Lensに対して理解が深まれば幸いです。
Connectには、Contact Lensの有効化が必須だと思いますので、皆さんも是非利用してみて下さい!
また、Amazon Connectについての再入門ブログもありますので、一読下さい。